文:小泽(小沢)

2026-03-04
におと歌い手との共作歴から見ると、彼は実は澄んで芯のある声を好んでいる。また SV2 でも、パラメータの調整によって千冬の声をより明瞭にできる。しかし本作で、におが顕著に調整しているのはジェンダーパラメータだけだ。それによって甘さを抑え、大人びた都会的な雰囲気をつくり、千冬の曖昧で気だるい感性を、そのまま生かしている。ここまでの性質は千冬の曲でも珍しくないかもしれないが、本作でにおがチューニングによって示す悲痛さ、とりわけブリッジの最後の、懇願にも近い声の表情は、私には想像したことのないものだった。これは千冬 SV2 自体の声質の変化だけでなく、におがもともと叙情を得意としているからでもある。彼は円熟した美しい旋律と、細部まで行き届いたアレンジをひたむきに追求する。その追求自体が、きわめて真摯な感情から生まれており、単なる技術への崇拝をはるかに超えている。