執筆:小泽(小沢)

2025-03-09
おそらく大半の聴き手は知らないだろうが、初期のみきとPはMikiを主に使っていた時期に、ブルースロック、サーフロック、さらにはブルーグラス(bluegrass)まで、1960年代の趣を持つ音楽をかなりの割合で作っていた。Miki V2の音色は活発で明るく、子どもらしさもあり、昔ながらの曲でも、可愛らしく楽しい歌に仕上がる。みきとPはThe BeatlesとLed Zeppelinが自身にとって重要だと何度も語っている。そこには、ブルースやカントリーの要素が混ざり、多少なりとも60年代サイケデリックの刻印を持つ音への愛着が表れている。
そのため本作には、新旧両方の色がある。冒頭のかすかにサイケデリックなギターが、冥界を思わせる歌謡的な旋律の周りで、鉄の生臭さを帯びた奇妙な空気を描く。嘆きのようなハーモニカは、さらに濃いブルースの風味を引き出す。退廃的で忘我のギターソロと、Jimmy Page風の狂乱を帯びたアウトロは、一種の自己追放のようだ。ピアノがグルーヴを大きく支え、みきとP特有のドラムは、以前のような前へ進む力よりも、踊りを誘う感覚が際立つ(深読みが許されるなら、60年代のバックビートの揺れにも近い)。廃墟で独り踊るような優美さと誇りが加わる。懐古的な美学には、レトロな制作もよく似合う。生録音の部分には、アナログ機材14の自然で温かな質感と、生き生きした臨場感がある。本人が吹いたハーモニカにも、細かな演奏上の不完全さと生々しさが残る。その上で、より成熟した気質のMiki SVが、孤独な一人が立ち止まりさまよう愁いを控えめに描く。わずかな鼻声と息遣いが、曲を朧で幻のような空気に染める。
この曲は、みきとPがMikiで初投稿してから15周年に発表された。だがその記念性は、SV歌声ライブラリの発売に際して彼女を再び使うことだけでなく、15年前、ボカロPになったばかりの頃の主要な作風の一つを振り返ることにもあると私は思う。15年後のみきとPには、もう新人時代のためらいや窮屈さはなく、自分のものにした要素を、より自然に、より没頭して使える。同時にMiki SVの音色もV2に比べて暗く抑制の利いたものになった。後年もみきとPは60年代的な作品を作り続けていたが、本作のように憂鬱な気質を抽出したのは初めてだ。それは自身の音楽的気質により合い、Miki SVの声の特徴もさらに生かしている。
注
EXIT TUNES ACADEMYのこと。日本のレコード会社EXIT TUNESが2011年から主催している大規模な巡回ライブで、出演者の多くは、ニコニコ動画で活動するネットシンガーやVOCALOID Pである。
ここでは、テープ、レコード、真空管機材などのアナログ機器による、温かく自然で、わずかな「不完全さ」も感じられるレトロな響きを指す。デジタル音楽の、まったく濁りのない響きとは異なる。