推薦者:花澪

「 」を手放そう
迷妄羊
2025.07.20
32m 43s
私は、オルタナティブロックや、実験に関わるあらゆる芸術作品には、「組織性」という特質が欠かせないと思っている。簡単にいえば、音楽の各要素の間にある規律だ。創作、演奏、聴取を貫く、構造的な制作の論理でもある。迷妄羊のこのアルバムも、そうした作品だ。「純粋ではない」オルタナティブロックとして、従来の音楽の流れの中に、対応するものが見つからない。既存の芸術を捉える枠組みへの衝撃が、あまりにも激しい。旋律、編曲、ポップな要素など、あらゆる仕組みが、解かれ、組み直される。一曲目「純粋な隙間」の題名のように、ギターとギターの間には「無」がある。この概念の表し方は、あまりに真に迫り、退屈に近いほどだ。
前半で耳に届くのは、多くの場合、声、ギター、そして背景の騒がしいノイズだけだ。いくつもの区間に切り分けられたギターも、心地よいとはいえない。クリエイターはただ、自分の考えを形にしているのかもしれない。だが、五曲目「りんごの匂いでいっぱいの空」で、ギターソロが、私の知るオルタナティブロックと、ようやく重なる。その後も、この「なじみのある感覚」が、少しずつ現れる。
もう一度、「組織性」という言葉で、最初の九曲を振り返ろう。丁寧に聴くと、思うほど難解ではないのかもしれない。途切れるギターは、実験的というほどでもなく、旋律は、むしろ素朴な原点に戻っているともいえる。一曲目から、シンプルな旋律を弾いているのだ。独自の編曲と、過剰な歪み。こうした「抽象的」で「耳に刺さる」ものが重なっても、不自然ではない。むしろ、「この編曲しかありえない」とさえ感じる。これが、この作品の「組織性」なのだ。
最後の「花」は、編曲が極めて豊かだ。ギターが全曲を貫き、歌姫の声は、ないよりはましというほどしかない。多くの場面では、激しく歪んだエレキギターとエフェクトの轟音だけが聞こえる。奇怪で夢のような空気は、それまでの曲と大きく違う。けれど、ここまで聴くと、思わず涙が流れる。何かが去ったようだ。彼のギターには、本当に感情があるようだ。悲鳴を上げ、泣き崩れ、私たちに何かを伝えようとしている。なのに私は、その表面的で、重要ではないところを、味わうしかない。